相模原商工会議所会報1月号に当機構理事の松岡康彦が務めた12月の講演の様子が掲載されました。
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「うつ病を出さない職場を」
研修会で松岡氏が講演 経営者に理解求める
当商工会議所は昨年月8日、第210回常議員会後に「うつ病を出さない職場づくり」をテーマにした研修会を開きました。精神保健福祉士の資格を持つ、湘南デザイン(株)代表取締役の松岡康彦氏が講師を担当。メンタルヘルスやうつ病について、分かりやすく解説しました。松岡氏は「うつ病を出さない職場にするためには、まずは経営者がメンタルヘルスを理解する必要がある」と言及。各職場での対策を呼び掛けました。松岡氏の講演を振り返ります。
■うつ病の増加要因
松岡氏が資格を持つ「精神保健福祉士」とは、精神障がい者の相談・支援に携わる専門職で、厚生労働省認可の国家資格となります。
具体的には、統合失調症やうつ病などの精神障害を患っている人に対し生活上のアドバイスや指導をしていきます。そして、その人がより充実した生活が送れるようにしたり、うつ病の再発防止を支援します。
「うつ病になる人が周囲で増えてきて、結局この病気は何かを知りたくて勉強を始めました」と、研修会の冒頭、松岡氏は自身が資格を取得したきっかけを話していました。
厚生労働省によると、うつ病患者は全国で110万人。20年前と比べると、実に3・4倍も増加しています。ただ、この数字はあくまで医療機関で受診している患者数なので、潜在的にはもっと多いとされています。今までは脳卒中、がん、心筋梗塞、糖尿病が「4大疾病」とされてきましたが、厚労省はこれに精神疾患を追加し「5大疾病」としました。松岡氏は、うつ病がここまで増えた理由として「労働の質の変化」と「年功序列制度の崩壊」、「平成不況」、「職場での人間関係」といった4つの要素をあげています。
「20年前まではパソコンが使えなくても仕事はできました。それが今では通用しません。労働の質が変わったのです。デジタルデバイドが起きて、ついていけない人が出ています」。また「年功序列から実績主義へと変わったことで、『あいつに抜かれたらどうしよう』など、いろいろな不安を抱えるようにもなります」と、具体例を盛り込みながら話していました。松岡氏は、うつ病が増えた理由で最も深刻なのは、「やはり職場での人間関係」とも指摘しました。
■メンタル対策の必要性
専門機関の統計によると、うつ病などの気分障害が生じる患者は30〜40代が最多です。「管理職になるとうつ病になる人が増える傾向です」と松岡氏はいいます。人がなぜうつ病になるのかは、医学的にも明確な答えが出ていません。ただ、もしストレスだとしたら、日本人の約6割が何らかのストレスを抱えているという調査結果を、厚労省は出しています。
2015年末から、従業員数人以上の事業所を対象に、年1回の「ストレスチェック」を義務付ける制度が始まっています。が、「どんなに社内体制が整っていても、うつ病にかかる社員は出てきます」と松岡氏はいいます。そのうえで「問題は、実際にうつ病になってしまったときです。『(会社は)メンタルヘルス対策について何もしていなかったじゃないか』と責任を問われる事態になりかねません。会社にとっては、2次被害、3次被害が起こってしまう可能性があります」と警告。職場における対策の必要性を語っていました。
■ストレスとうつ病
松岡氏は、ストレスの基礎知識についても解説しました。ストレスには、必ず原因(ストレッサー)があり、やがて「ストレス状態」に陥ります。しかし、大抵はストレスを浄化する「ストレス反応」が働きます。「むしろ〝心地よいストレス〟は生産性が高まるといわれています。なので、ストレスはあってもよいのです」としています。しかしながら、ストレス状態が続いてしまうと生産性が低下します。例えば、疲労がたまるなどして、ストレスを跳ね返す力がなくなるなど、「自己防衛機能」が効かなくなり、危険信号となります。そしてうつ病になる恐れが出てくるのです。
「ストレスに強くなるためには、運動や仕事を適度にやることです。加えて、バランスのよい食事やリラックス法を身につけること。思考パターンや人間関係を見直したりするのも手です」と松岡氏は話しています。最後に、うつ病を出さない職場づくりには▽気配り(身体で出すサインに気を配る)▽気づき(部下の心中)▽声掛け(気づいたら声掛け)▽傾聴(聴いてあげる姿勢)―などを実践することが必要と、繰り返し強調していました。