かながわ経済新聞10月号に掲載されました

かながわ経済新聞10月号に掲載されました。

経営者と実現力

今回は「経営者と実現力」について考えていきます。実現力でまず大切なことは「確固たる強い意志」だと思います。「やり遂げる」という勇気と湧きでる熱意です。新しい事業・技術への挑戦は前人未到ですから、暗中模索、試行錯誤の連続です。社内でも賛同者は20%位しかいません。あとの社員は傍観者です。構想したことを具体的に実行する中でまず必要なのは、一緒にやってもらえる人です。老若男女を問いません。

私が経験したことをお話しします。1980年代、コンピュータ制御の加工機械「CAM」が世間に出始めました。その時に導入を決め、一緒に動かすことに賛同しやってくれたのは、学校を出たばかりの営業と製造の社員でした。

受注したものを、従来の工程とは全く違う流れで製造する訳ですから、どんな製品ができるかは分かりません。コスト計算こそできますが、納期と品質が問題です。中小企業の体力では「保険」を打って、従来の工程と両方製造する力はありません。新しいことやるには勇気が必要だというのはここです。

成功を信じて熱意がなければ取り組めません。全く新しい工程で出荷までやり遂げるという気迫が必要です。当時、私は27歳の経営者でした。営業社員も26歳、製造部員は18歳でした。その18歳の青年は、出荷に取り組んだ時、寝る間を惜しんで挑戦していました。私も心配で早朝に出社すると、真夏の朝陽を浴びながら車内で仮眠している青年製造部員の姿を見かけました。その時は、さすがにぐっときました。

それからも試行錯誤の連続でしたが、これまでの努力が奏功し、従来は不可能だった納期で納品できました。

会社にとっても、経営者にとっても、前人未到のことをやるのは大変ですが、やがて経験となり、力になります。皆さまもコロナ後を見据え、ぜひとも新しい事業・技術に挑戦してみてください。 

(湘南デザインCEO /相模原商工会議所工業部会副部会長/公認心理師)