経営者に必要な「発想力」
今回は経営者に必要な「発想力」についてお話しします。発想力と言うと、「特別な人にだけ備わっている能力」と思われがちですが、そうではありません。実は誰にでも備わっています。ただし、漫然と日々の生活を送っている人には、残念ながら発想力は生まれません。体験を通じて醸成された深い洞察力が、発想力を生むからです。
また、最初から「できない理由」を考える人も、発想力は育ちません。具体例としてカップヌードル誕生の話をします。日清食品創業者の安藤百福は、袋油揚げ麺「チキンラーメン」を開発し、販売にこぎ着けました。
そしてアメリカにも売り込みましたが、アメリカ人は丼と箸で麺を食べる習慣がなく苦戦しました。そんなある時、アメリカ人がチキンラーメンを二つに割り、コーヒーカップとフォークで食べる姿を目にしました。同時に「これだ!」と思い、カップヌードルの開発にかかり、1971年9月に発売しました。翌年2月には、浅間山荘事件ニュースが連日報道され、テレビの中で「警察機動隊が食べているのは何だ?」と話題になり、日本中に知れ渡りました。安藤百福は、渡米体験から得た深い洞察力で、カップヌードル開発の発想を得たのです。
私自身、これまで経営をしていく中で、例えば、製造工程にシリコンゴムを採用するなど、当時の発想が今でも生かされているケースが多々あります。物事に対し、できない理由から入るのではなく、できるにはどうすればよいかを思案することが第一歩です。これが発想力の源泉です。
(湘南デザインCEO /相模原商工会議所工業部会副部会長/公認心理師)