かながわ経済新聞4月号に掲載されました。
経営者と予見力
自動車が内燃機関から電気自動車(EV)へ移行するのが世界の潮流になってきました。1886年、内燃機関で走る自動車をダイムラーベンツが作りました。そして20年後、フォードがベルトコンベアー生産方式でT型フォードを発売、自動車を安く大量に普及させることに成功しました。
「米国ではそれまで輸送手段とされていた1500万頭の馬が自動車に置き換わるのに20年しかかからなかった」と、トヨタの豊田章男社長は以前、日本記者クラブで講演しています。現代において移動手段は、かつての馬から内燃機関車の時代へと移りました。
経営者は時の科学技術を知り、情報を集め、何年後にどの位の大きさの産業として育つのかを、感性を発揮しながら想像し、予見する力を付けることが必要です。「予見力」があればこそ、ヒト・モノ・カネに投資する勇気が湧いてきます。時代の潮流を読むには、科学技術を知ることが必須だと思います。
昔は普及すらしなかったEVですが、今では蓄電池技術の飛躍的な進展で、長い走行距離にも耐えられるようになりました。二酸化炭素(CO₂)削減に対する気運と相まって、今後もEV化の流れは止まらないと判断できます。
とはいえ、既存の自動車生産企業は内燃機関製造で成り立っています。一気に舵を切るのは大変です。ただ、現実を見ると、NY株式市場の読みは、テスラモーターの時価総額が66兆円、トヨタは27兆円となっています。自動車はEVと自動運転の時代になるものだと、投資家たちは大胆に予測しています。
自動車が内燃機関からEVに変われば、社会インフラも一変します。例えば、充電場所は、ガソリンスタンドではなく、家庭や会社に変わります。今月は自動車の話になりましたが、技術革新で大きく変化していく社会をチャンスととらえ、投資行動ができる経営者になりたいものです。
(湘南デザインCEO/相模原商工会議所工業部会副部会長)