ウィズコロナの時代ストレスとどう向き合うか 【中編】
一般社団法人・ 産業精神保健機構 代表理事/精神保健福祉士 松岡 康彦
皆さまこんにちは。10月も半ばとなり、秋には欠かせない紅葉前線が南下しています。人恋しい秋でもあります。万葉集では大伴家持が「黄葉の 過ぎまく惜しみ 思うどち 遊ぶ今夜は 明けずもあらぬか」と、738年に橘奈良麻呂宅で詠んでいます。意味は「紅葉が散り過ぎてゆくことを惜しんで、友と遊ぶ今夜は明けないで欲しいな」です。1200年以上前の歌ですが、今と気持ちは変わらないですね。一方、論語には「友遠方より来たりてまた楽しからずや」とあります。これらから、人との会話や接することが大切であると分かります。
さて、コロナ禍においては、人との接触が難しいことからストレスがたまります。本誌9 月号ではストレスについて話しましたが、もう少し掘り下げて話を進めていきます。
世の中にはストレスに対し、強い人間と弱い人間がいます。専門的な話になりますが、対処が弱い人のことを「ストレス脆弱性」と言います。ただし、これが決して悪いわけではありません。自覚することが大切です。弱い人は、それなりに対処して行動すればよいのです。では、どう対処するのでしょうか。
ストレスがたまると身体反応が出ます。代表的な症状としては「寝つきが悪い」「眠れない」「食欲がない」「下痢が続く」「性欲がなくなる」などです。心の症状としては「イライラする」「落ち込む」「涙が出る」「じっとしていられない」ことがあります。これらの症状がある場合は要注意・イエローカードといえます。そうなった場合はストレスコーピング(除去)が必要になります。
ストレスコーピングには主に2 種類あります。具体的にはストレッサー(原因)そのものと直接向き合う「問題焦点型」での対処と、旅行やスポーツ、趣味といった気晴らし・休養でコーピングする「情動焦点型」です。
人は誰しも「ホメスタシス(生体恒常性)」を持っています。ただ、興奮するとストレスがかかり、続けば、このホメスタシスが働かなくなります。結果として、心身ともに症状が出ます。ストレスと向き合うには、自分自身をうまくコントロールできるかが鍵です。要はセルフケアが大事なのです。秋の味覚を楽しみ、家族や友と語り、読書をし、ゆっくり風呂に入り、よい睡眠で楽しい夢を見てください。それが最良のストレスコーピングだと思います。
また、家族や職場が気づいてあげることも重要です。コロナ渦で人との接触が少ないと、気づきが足りなくなります。周囲の人たちに対し、より一層の気遣いもお願いします。
(11月号へ続く)