かながわ経済新聞9月号に掲載されました

かながわ経済新聞9月号に掲載されました。

人育ては最低10年

経営者にとって重要な仕事の一つに「人育て」があります。まず人育てにかかる年数ですが、私の経験ですと「最低10 年」はかかると思います。経営者の発言の意味や思いを理解してもらうまで、手を緩めてはいけません。人育てで気を付けたいのは、経営者自身が発言する内容に一貫性がないと、社員自身が理解できないということです。

経営者に対し、社員が「分かりません」と言うのには勇気が必要です。ですから、なるべく分かりやすく具体的に話すことが大切です。ダラダラではなく、明解に伝える努力を惜しんではいけません。

少し話は飛びますが、社用車を粗末に扱う社員がいたとします。当社の場合はNGです。少しの傷でも即修理をするよう指示しています。会社のクルマを大切に扱えない人材は、会社の製品も大切に扱うはずがないからです。傷があり汚いクルマで納品にやってきたら、お客さんもどう思うでしょうか? きっとこの会社の品質は本物ではないと感じるはずです。

一方、トイレ清掃も社員が持ち回りでやっています。トイレは会社で一番大切な所です。なぜなら、みんなが使うからです。次に使用する人のことを考えず、汚いままだったらどうでしょか? これは工場での生産活動と同じです。次の工程を担当する人のことを考えて作業しなければ、よい製品はできません。「人に対する気遣い」こそが、トイレでも、仕事でも大切になるのです。

実際、こうした考えが社全体に伝わるまで、20 年かかりました。何度も何度も心を開いて話し続けることが重要です。経営者が心開いて話さないと通じるものも通じません。コロナ禍で経営者も社員も大変ですが、その中でしっかりと意思疎通を図り一体感を持つことが、乗り切るための重要な要素だと思います。

(湘南デザインCEO/相模原商工会議所工業部会副部会長)