相模原商工会議所会報9月号に記事が掲載されました。
ウィズコロナの時代ストレスとどう向き合うか 【前編】
一般社団法人・ 産業精神保健機構 代表理事/精神保健福祉士 松岡 康彦
皆さまこんにちは。本会報2019年11 月号以来、お会いすることになります。今年始めに中国・武漢から新型コロナウイルスがやってきて、あっという間に世界中がパンデミック状態となりました。日本も例外なく感染が拡大しています。こうした中で、見えない不安からストレスも発生していることだと思います。
ストレスを和らげるためには、まずは「温故知新」です。パンデミックになった感染の歴史を知ることです。その一例が1918 ~ 21年の「スペイン風邪」です。第1次世界大戦中に大流行し、日本もその波が3 回やってきました。その結果、計2380 万人罹患、38万人死亡した推計値があります。
国民はマスク着用で映画館などの人が集まるところには立ち入らない。咳き込みはハンカチを使う。こうしたポスターで啓発したそうです。このことは100 年経った今と、さほど変わりません。コロナ禍の根本的な対策はワクチンと治療薬開発になります。それまでは「ウィズコロナ」と言われるように、コロナとのお付き合いが必要です。そして、そのためにはストレスが溜まらないようにすることが大切になります。
では「ストレスとはなんぞや?」です。カナダの生理学者セリエは56年、人間が外部から寒冷、外傷、疾病、あるいは怒りや不安といった「精神的緊張(ストレッサー)」を受けたとき、これらの刺激に適応しようとして生体に一定の反応が起こることを発見しました。加えて、全身に起きる反応を「全身適応症候群」と名づけました。そしてこの症候群を「警告反応期」「抵抗期」「疲憊期(ひはい)」の三つに分けました。
この理論を引き継いだ心理学者ラザルスは「ストレスコーピング理論」を発表しました。ストレスの原因である「ストレッサー」や、自身の「ストレス反応」に対処し、問題を解決する方法です。ラザルスは「ストレスが起きたらストレッサーに対処する判断と認知がある」としました。つまり、一次評価でこのストレッサーは有害か無害かの判断をし、二次評価では対処できるかどうかの認知です。ここでは、ストレス反応をどうコーピング(対処)するかについて、「問題焦点型コーピング」は、問題に直接当たり解決をする。「情動焦点型」では趣味などに没頭し問題とは別の方法でストレスを発散する、としています。
一方、別のアプローチもあります。アメリカの心理学者セリグマンは98年に「ポジティブ心理学」を発表しました。精神疾患を治すことよりも、楽観主義に基づいて通常の人生をより充実したものにすることが大切であると説いています。現在のコロナ禍で不安を抱えている人は少なくないでしょう。それでも明るく楽観的な視点で、自分なりの幸福感を発見してみてください。それがストレスを溜めないための良策であると思います。
(10 月号に続く)