松岡康彦の産業よもやま話
歴史から学ぶ想定外の行動
天正10(1582)年6月2日、織田信長は本能寺で明智光秀軍に包囲され、火を放ち切腹。秀吉は備中高松城を水攻めの中、信長の死を知るや毛利と和睦し、2万の大軍を率いて「中国大返し」を強行しました。この瞬時の判断がなければ、後の豊臣秀吉はありませんでした。
記憶に新しい2011年3月11日、東日本大震災の大津波に見舞われた釜石市では、3000人の小中学生のほぼ全員が避難し奇跡的に無事でした。群馬大学・片田敏孝教授が防災教育プログラムで説いた三つの原則「想定にとらわれないこと」「最善を尽くすこと」「率先避難者になること」が生きました。
歴史から学べるのは、たとえ想定外のことがあったとしても「正確な情報」と「的確な判断」で乗り切ったということです。現在、猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大は、私たち経営者にとってまさに想定外のことです。こういう時だからこそ、歴史が大いに参考になります。
ここから先、経営者に求められるのは、情報をいかに仕入れ、判断していくかだと思います。私自身、米リーマン・ショックや東日本大震災後の景気低迷も経験しました。当時を振り返ってみても、これらのことが非常に大切であると痛感しています。
自身の努力だけでは限界があるかもしれません。そんな時は「諦めない気持ち」と「お願いする力」が重要になってきます。私事になりますが、昭和38(1963)年、私の祖父が危篤との知らせを受けた父は、電車で中野駅に向かいました。しかし、途中乗り継ぐはずの中央線の最終電車が出てしまいました。でも、父は諦めずに交渉し、三鷹駅まで電車を出してもらいました。信じられないことですが、これも「諦めない気持ち」と「お願いする力」があったからです。想定外の新型コロナだって乗り切れると信じています。
(湘南デザインCEO/相模原商工会議所工業部会副部会長)