人の気持ちと行動パターン【中編】
今年も神無月となり、皆さま思い思いの秋を過ごされていることでしょう。明治の俳人正岡子規は「柿くえば鐘が鳴るなり 法隆寺」と詠んでます。法隆寺の茶屋で静寂の秋を感じている俳句です。
さて、前回は「吊り橋実験」でドキドキするから恋心が生まれると説明しました。男女の体の中ではホルモンが働いています。エストロゲンは女性ホルモン、テストステロンは男性ホルモンです。この男女の代表的なホルモンによって「行動までをコントロールされているのか」という議論があります。
心理学者・ロバートザイアンスは、単純接触を繰り返すと親しみが湧いてくることを証明しました。これを「ザイアンスの法則」と言います。これも恋愛感情と近いところにあり、お付き合いする人、結婚する人は5 メートル内にいると言われるゆえんです。
次に「マズローの欲求5 段階説」について話します。皆さんは日常会話で「それって承認欲求でしょう」と言うかと思いますが、マズロー説では4 段階目になります。具体的には、1 段階は生きる上で基本的な「生理的欲求」、2 段階は「安全の欲求」となります。生理的欲求が満たされたら、当然安心する気持ちと安全な場所を求めるのは自然です。3 段階では心理に近いところの「所属と愛の欲求」が現れます。孤独や他人から離れた状態は避けて、家族や恋人、友達、職場の同僚、サークル仲間などの共同体の一員に加わりたいと思います。周囲から愛情深く暖かく迎えられたい欲求です。
4 段階は「承認の欲求」です。具体的には以下です。
▽ 自己評価としての欲求、自分自身を認める自尊心。もしくは他者からの評価に対する欲求
▽ 評判や人望、地位、名誉、重視、などを求める欲求
この4 段階の承認欲求が満されると、自分は社会で役に立つ存在だという感情が湧きます。逆に承認欲求が満たされないと、焦燥感や劣等感、無力感などの感情が現れます。5 段階は「自己実現の欲求」となります。人が潜在的に持っているものを開花させて、自分がなり得る全てのものになり切りたいと感じる欲求です。より一層自分らしく生きたい欲求のことです。
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それでは、ここからはビジネスにおける心理学について説明します。会社はリーダーシップのある人が牽引していく組織です。リーダーシップについては、心理学者・三隅二不二(みすみじゅうじ)の「PM理論」が有名で、そこでは四つ(P・p・M・m)の型に分類しています。
Pとpはパフォーマンス(仕事の成果)、Mとmはメンテナンス(部下との関係)です。つまり、pm型は「未熟なリーダー」となります。pmが両方低く管理者としては失格ですね。一方、pM型は仲良しクラブのリーダーで、グループをまとめるのは優れていますが、仕事を達成させる面では劣っています。Pm型は、目標達成能力こそ高いですが、集団維持能力は低いリーダーで人材が育ちにくい欠点があります。最後に、PM型は理想的なリーダーで、目標達成能力、集団維持能力がある統率者です。会社がうまく回るのに必要な人材ですね。
最後はモチベーションについてです。モチベーションを生み出すのには要因があります。「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」です。外発的動機づけは給与アップや昇進など、目の前の人参でやる気がでる動機です。短期的には効果はありますが、残念ながら継続した強い気持ちが湧いてこない欠点があります。それに対し、内発的動機づけは、自分の意志に基づいて行動するので、やる気が自然にでて、自分でやる気をコントロールできます。内発的動機づけで行動したいものですね。 (11 月号に続く)