かながわ経済新聞7月号に掲載されました

かながわ経済新聞7月号に「松岡康彦の産業よもやま話」が掲載されました。

松岡康彦の産業よもやま話

会話力と経営者

今回は「会話力と経営者」について話します。人と動物との大きな違いは言語を持っていることです。人は生まれてから36 カ月ほどで1500 ~ 3000の語彙(ごい)を覚え、大人とも会話ができるようになると言われています。乳幼児期の言語獲得能力はかなり優れています。
意思表示もできるようになります。ただし、この時点では、親との会話や絵本から獲得した「擬似体験」からの言葉が数多く含まれています。これがそのまま大人になると厄介なことになります。実体験ではなく疑似体験のみで多くを語る大人になります。私は「頭でっかち」と呼んでいます。

昔こんなことがありました。3歳になった娘は絵本で象を知っていました。ところが、実際に動物園で象を見せると泣き出しました。サーカスに連れて行ったときも同様でした。要は疑似体験と実体験とでは大きく異なるのです。

話を戻しましょう。経営者にとって「コミュニケーション」は何よりも大切です。今では人のコミュニケーション手段はメールやLINE、SNSなどもありますが、やはり「会話」が大部分を占めます。その会話で疑似体験に基づいた話ばかりをしていたら、相手は飽き飽きして「頭でっかち」と思うでしょう。それに対し、真の体験からの言葉には説得力があります。ただし自分のことばかり話すと会話になりません。

確かに、新聞や本などを通じ疑似体験するのも大切です。でも当事者自身の実体験からの言葉はもっと深みがあり臨場感があるのです。コロナの後は、たくさんの人と交流するのはもちろん、見る・聞く・話すの実体験で会話力を磨いてほしいと思っています。

(湘南デザインCEO/相模原商工会議所工業部会副部会長)